言葉と鉛筆で描く日常風景 201501

ニュウの泉~雨が来た!



雨が来た!

――雨ノ匂イガスル。
ふと、少女は顔を上げた。

しばらくすると、雨に追い出されて
隣町からやって来た空気の塊が突風となって
ぶわっと少女の髪を吹き散らした。

The rain had come!

It’s the scent of the rain!
The girl suddenly looked up.

After a while, a mass of air from a neighboring town was driven out by the rain and became a gust blowing through her hair.

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野鳥物語~孵化から21日目

15.孵化から21日目

 早朝、親鳥が巣から出て来るのを見た。ということは、昨夜はヒナたちと過ごしたということになるのだが、この鳥はいくつ巣を持っているのだろうか。それから、1羽だけで餌を運んでくるのか、それともカップルが交互に運んでいるのか、知りたいところでもある。

 ヒナたちの鳴き声がマイルドになり、餌を持って来た親鳥の滞留時間も長くなった。以前は、40秒程度で給餌を済ませていたのだが、最近はその倍以上かけている。
 また親鳥は、給餌が終わって巣から出てきてもすぐには飛び立たず、数分間、「クリックリッ」と鳴きながら巣の前に佇むようになった。

 ヒナたちは、親鳥がいない間も互いに小さな声で囁き合う。なかには、「ピー」の前に小さな「ク」が入るようになったヒナもいて、親鳥の「クピー」という鳴き声に似てきた。

 今日は巣の中で羽ばたきをする音も聞こえたから、巣立ちまであと少しだろう。

 それにしても、あんな狭い巣のなかで羽ばたきをされると、他のヒナは迷惑だろうな。ノルウェイの森に出て来る突撃隊をつい思い浮かべてしまう。

'I'm really sorry,' I said.., 'but I wonder if you could do your exercises on the roof or something. It wakes me up.'
'Impossible,' he replied.

「申し訳ないんだけど、それ屋上かどこか別の場所でやってくれないかな。眠れないんだ」
「出来ない」、と彼は答えた。

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ニュウの泉~ひとりだけの時間



ひとりだけの時間

静かな午後のひと時。
少女はソファの上で子猫のように丸くなってまどろむ。

いつもの大人びた表情はどこかに隠れ、
自分だけの時間がゆったりと流れる。

いま何を考えているの?

何となくそう尋ねたくなったけれど、
そっとしておいた。

A time of solitude

In the stillness of a lazy afternoon, the girl dozed off on a sofa curled up like a cat.

Her usual mature expression was hidden away somewhere.
The time belong only her flowed in a silent.

“What are you thinking now?”

I wondered and thought of asking her, but I left her alone.

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村上春樹の小説

I' m not a “member” of any generation. I'm just me.
私はどんな世代の一員でもない。私は私だ。

(Hanaley Bay from a book “Blind willow, Sleeping woman” by Haruki Murakami.)

 この言葉は、村上春樹氏の作品群を貫く強い個人主義の表れだ。彼の作品に登場する人々の多くは、耐えがたい孤独のなかで誰かの温もりを求めつつも、「私は私」という姿勢を崩さない。

 明治維新後、日本は産業立国を目指し、それに見合う人材の教育、つまりひと握りのエリートとその他多くのマニュアル・ワーカーの育成に努めてきた。
「私は私」という考え方は、このような没個性的人間の大量生産に反発するかたちで生まれた。

 ある集団に属して話題や感情をシェアする(同じような行動をとる)、というライフスタイルは、一見豊かで安定しているようだが、最終的には「私は誰だろう」という矛盾に行き着く。

 世界で唯一無二の人格という独自性があるから、その人生は意味をもち得る。
 私は、「他の誰でもない私」として考え、物事と向き合い、愛し愛される―村上氏の読者は、そのような人格を体験したいと思うのだろう。

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ニュウの泉~雨上がりの傘



雨上がりの傘

雨上がり。

うっすらと明るんだ東の雲間から幾筋もの光が降り立ち、
地上の植物たちをきらきらと輝かせる。

神サマガ、オ陽サマノ下デ、洗イタテノ街ヲ
パンット干シタ。

少女は赤い傘をくるくる回しながら、
楽しげに呟いた。


An umbrella after the rain

After the rain, a thousand streaks of light peered through the bright clouds in the east, and shone on every plant on earth.

Under the sun, God dried the newly rain-washed town.

The girl hummed pleasantly while spinning her red umbrella.


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野鳥物語~孵化から17日目

14.孵化から17日目

 ヒナたちのコーラスが喧しい。まるで、歌劇こうもりの「シャンパンの歌」みたいだ。
 その理由のひとつは、親鳥がヒナたちを焦らし始めたからだ。巣の真正面から約50センチほど離れたところにとまり、白々しくキョトキョトと周囲を見回す。その姿を巣の入口から見ているヒナたちは、一斉にウェルカムコールを送るのだが、親鳥は知らん振りで数分待つ。

 今日ふと気付いたのだが、この鳥の飛び方は少し変わっている。

 まず、高速で羽ばたくことができるということ。
 翼を拡げ、タンッと地面を蹴って15センチほど跳ねると、ロケットでも噴射したかようにものすごいスピードで飛び去っていく。
 前から見ると(つまり巣に戻って来るときだが)、羽ばたきが速過ぎて翼が見えず、弾丸がひゅんと飛んでくるように見える。

 次に着地の仕方だ。
 通常、小鳥は着地の際の衝撃を和らげるために身体を起こし、羽をひろげて減速するものだが、この小鳥はこれほど高速で飛びながらそういった動作をしない。ひゅんと飛んで来て、いきなりタンッと止まる。
 この鳥がハンガーやロープで吊るしてある物干しに好んで止まるのは、おそらく着地の衝撃を和らげるためだろうが、それにしても強靭な脚だ。

 ここ数日、親鳥はヒナたちと共に夜を過ごすのをやめたらしい。夕方5時頃にその日最後の給餌を済ませると、すぐにどこかへ飛び去り、翌朝7時頃にまた戻ってくる。
 今日の給餌の最終便は、夕方4時過ぎ。つまり、ヒナたちは翌朝7時まで約15時間の間、餌なしで過ごすことになる。

 巣立ちを促しているのだろうか。

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ニュウの泉~声の響き



声の響き

お絵描きに夢中な少女。

そうっと抱き上げると、
驚いたように声を上げた。

Wooooooooooo

それは、峡谷を吹き抜けてやって来る風のように
どこか懐かしく優しい響きをもっていた。

Resonance of a voice

The girl who had been intensely drawing tittered, being surprised when I gently picked her up.

‘Wooooooooooo!’

Like a breeze through a valley the voice resonated tenderly.

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野鳥物語~孵化から4日目

13.孵化から4日目

 朝、親鳥が出掛けている間に2羽の雀がやって来て、巣にちょっかいを出そうとしたので追い払った。
 後から戻った親鳥はすぐに巣へ近寄らず、50センチほど離れた物干し台にいったん止まって、いつもより入念に辺りを窺うような仕草をした。匂いか何かで雀の侵入が判ったのだろう。

 数時間後、同じ雀たちが再びやって来て、巣を取り囲むような態勢をとった。親鳥が巣の中で給餌をしている最中のことだった。
 僕がベランダに近づくと反射的にピクッと身体をこわばらせたが、逃げようとしない。何かいつもと違う不穏な空気を感じた。
 僕はサッシのガラスを少し強く叩き、再び雀たちを追い払った。

 さてさて、そのような憂慮すべき事態が自分たちの頭の上で起こっていることなど露程にも知らないヒナたちは、刻々と成長を続ける。今日は、日没後もピーピーと空腹を訴え続け、午後9時頃にようやく寝静まった。

 -お腹すいた・・・
 -知らん
 -ごはん・・・
 -寝れ
 -ザワザワ・・・

 一度にたくさんの子をもつと、親鳥も大変だ。

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ニュウの泉~ベイビー



ベイビー

小さく温かい灯。

抱きしめると、その灯は蛍のように
ふわっと明るく輝いた。

ハロー、ボーイ! 聴こえる?

少女は眼を閉じて、心のなかでそっと話しかけてみた。

Baby

A small, warm light, it glows bright and soft like a firefly when the girl hugged.

Hello little boy, can you hear me?

The girl closes her eyes and tries to talk with the baby from within her mind.

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野鳥物語~子育て

12.子育て

 ヒナたちの声は、1日過ぎるごとに力強く多様になる。「ミュウミュウ」が「チュウチュウ」になり、「チュウチュウ」のなかに「チーチー」や「ピュルル」が混ざるようになる。
 2日目になるともう、誕生当日のように声が風に流されることはなくなり、3日目は饗宴と言ってよいような歓喜の賑わいを見せる。

 さて親鳥の方だが、卵が孵化して以降、1羽しか目にしなくなった。2羽で交互に餌を運んでいるのか、1羽で世話をしているのかは定かでない。

 不思議なことだが、孵化前にあれほど悪戯に来ていた雀や九官鳥がパッタリと来なくなった。たぶん、これらの鳥は卵の状態なら食べることができても、肉であるヒナには興味がそそられないのだろう。そういう意味では、自然はよくできている。自ら動くことのできないヒナを狙われては、種の存続が危ういからだ。

 親鳥とベランダではち合わせになる、という事故も起きなくなった。餌をヒナに与えると親鳥はすぐに外へ飛び立ち、1時間ほどは帰って来ない。だから、飛び立ってすぐに洗濯物の世話などの雑用をバタバタと済ませればよいわけだ。

 ちなみに、ヒナたちは親鳥が出掛けている間は一切声を出さない。僕がベランダで音を立てても、巣はしんと静まり返っている。
 時々、どんな様子なんだろうと巣を覗いてみたくなることがある。でも、遠くから静かに見守るのがいちばんだ。

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