言葉と鉛筆で描く日常風景 201502

野鳥物語~孵化から33日目

20.孵化から33日目(12月11日)

 ここ数日、朝夕は4羽しか見掛けない。親鳥は別な場所に宿泊しているのだろう。
 じっと観察していると、ヒナたちの1日が親鳥と多少異なることが判る。親鳥が朝6時頃に出発していたのに対し、ヒナたちは6時45分頃に出発する。帰りも、親鳥が夕方5時過ぎであるのに対し、ヒナたちは4時過ぎだ。
 
 それから、昼間に時おり親鳥が1羽で巣に戻って来るようになった。長居をするわけではないが、このことから、どうやらヒナたちは親鳥とは別行動をとり始めているらしい、ということが判る。

 ともかく、夕方6時頃には必ずチーチーというヒナたちの餌をねだるの声が聞こえるので、親鳥がまだ彼らの世話をしていることは確かだ。

 それにしても、僕の小鳥に対する知識というのは、かなりいい加減なものだったと思う。

 僕は、ヒナというものはいったん巣を出たら二度と戻ってこないと思っていた。いや、そのように学校で教わった記憶がある。
 たとえば、「野鳥のヒナたちは、巣立ってしばらくすると親鳥のテリトリーから離れ、各々が自分のテリトリーを新たに切り取らなければならない。これには近親相関を避ける意味もある」、というふうに。
 しかし、うちのヒナたちは、巣から出て来て9日も経つというのにまだ親に餌をねだっている。第一、僕のベランダはすっかり彼らのマイホーム化しており、巣立ってさえいない。

 とはいえ、そんなに遠くない日に各々パートナーを見つけ、新しい家庭を築くのだろう。
 そこでふっと思ったのだが、もしかして親鳥たちもこのようにして誰かのベランダで生まれ育ったのかも知れない。

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野鳥物語~孵化から29日目

19.孵化から29日目(12月7日) 

 朝6時、小鳥たちが「クリックリッ」と騒ぎ始める。親鳥2羽のときでさえ賑やかだったから、5羽の今では小学1年生の集団登校みたいだ。

 ロダンは、相変わらず朝早くから黙然と思索に耽る。が、巣の前に突っ立っているので、はっきり言って邪魔だ。
 巣からピンポン玉のように飛び出て来たツインズに「どいてどいて」と押されて、「ひえっ」とばかりに飛び立つ。ツインズがそれに続く。
 いつも取り残されるのは、末っ子のミゼット。
 物干し台から外を眺め「ピーピー」と鳴く姿は、朝陽のなかで黒いシルエットとなり、それなりの哀愁を漂わせている。・・・などと言っている場合ではない。みんな行ってしまったではないか、急げ!

 午後4時過ぎ、ヒナたちがオットー・スコルツエニー大尉率いるグライダー部隊のようにバラバラと降下してくる。いっそのこと、巣の名前も「グラン・サッソ」にしようかな、などと思ったりもする。

 で、始めるのは例のごはん・コーラスだ。今しがた外から帰って来たばかりなのに、なぜ「ごはん」なのか、ユーラシア大陸に横たわる永遠に解けない謎のひとつだ。
 それでも、親鳥は甲斐甲斐しく餌を与えているようだ。のみならず再び外へ出掛け、5時と6時にも給餌をしていた。

 ”巣立ち”はどうなったんだ・・・?

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ニュウの泉~The Spring of New (Final story)



ニュウの泉

小さな胸の奥深く、
そっと湛えられた魔法の泉。

愛はその水辺に照り映える無限色の光のなかで、
大切に育てましょう。

冬がおわったら、それをポケットいっぱいに詰め込んで出掛けます。

大切な思い出をどこかに置き忘れて
泣いている誰かさんのもとへ。

The spring of New

The magical spring quietly fills a void deep within the girl’s heart.

Love shall be fostered in the light of infinite colors reflecting upon the water’s surface.

When winter is over, we would gather it a pocketful and depart.

To those who cry for the loss of precious memories left behind.

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野鳥物語~孵化から27日目

18.孵化から27日目(12月5日)

 朝6時半、2羽のヒナたちがベランダの外にある庇に仲良くとまって、親鳥の出発を待っている。いつも一緒なので、ツインズと呼ばれている。たぶん、先に巣を飛び出した2羽だろう。

 1羽のヒナは低血圧なのか、ロダンの「考える人」みたいにややうつむき加減で巣の入口に佇んでいる。生後27日でそんなに深刻に考えるべきことがあるのだろうか・・・。こちらは、そのままロダンという名前を与えられている。

 残り1羽の甘えん坊は、まだ巣の中でピーピーと赤ちゃん言葉全開だ。たぶん末っ子なので、ミゼット(小さい)という名前にした。

 クピックピッと鳴きながら巣から出て来た親鳥が、例のロケット飛行でひゅんと飛び出し、庇のツインズがそれに続く。ロダンが、何だか物憂さそうにやや遅れて飛び立つ。
 取り残されたミゼットは、やっぱり巣の中でピーピーと鳴き続け、呆れた親鳥が迎えに戻って来る。

 と、まあこれがファミリー版の朝の風景で、賑やかな点はカップル版と変わらない。
 
 小鳥たちは、朝出発すると夕方までは帰って来ない。たぶん裏手の森林あたりで飛行と餌を探す練習をしているのだと思う。あるいは、たんなるピクニックかも知れないが。

 午後5時前、アパートの周囲で「ピーピー」、「クピー」という甲高い声が交差する。親鳥とヒナたちが互いの位置を確認し合っているのだ。かなり広範囲でやり取りをしているので、事情を知らないアパートの住人がベランダに出てきて何事かと首を傾げる。

 40分後、ロダンとミゼットがまず帰還する。親鳥の真似をしていったん巣の下の物干しにとまり、そこから身体を縦にして室外機と壁のすき間を昇り、巣の横に出る。
 が、まだ尾羽の短いミゼットが失敗して、洗濯物に辛うじてしがみつく。身動きがとれず、「ピーピー」と親鳥を呼ぶのだが、最後には諦めて外へ飛び出していく。
 入れ替わりにツインズがばらばらと帰還。こちらは巣の正面と下の物干しに舞い降りて、難なく巣の中に入っていく。
 そして、最後にミゼットを拾った親鳥が到着し、巣の中で「ごはん、ごはん」の合唱が盛大に始まる。

 5羽無事に帰って来たので、ほっ胸を撫で下ろす。でも、何となく後から考えると、全部で6羽だったような気もするのだが、気のせいだろうか・・・。ここまで数が多いと数えるのが面倒になってくる。

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ニュウの泉~空に浮かぶ絵



空に浮かぶ絵

ふと見上げると、
まだ明けきれない梅雨空を彩る美しい虹。

君ノ絵ガ オ空二浮カンデル、と
少女はいつもの倍くらい大きな目をして言った。

A picture in the sky

When the girl looked up into the sky, she could see a
beautiful rainbow coloring the yet clouded rainy
season sky.

"Your picture is floating in the sky!"

The girl said excitedly with her eyes twice as big.


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野鳥物語~孵化から26日目

17.孵化から26日目(12月4日午前9時15分)

 朝2回目の給餌の後、再び親鳥が巣の前に立ち、クリックリッと鳴いてヒナたちに巣立ちを促した。ヒナたちも巣の中からクリックリッと鳴き返す。
 3分程それが続いた後、ヒナたちがわらわらと飛び出て来た。1羽、2羽、3羽、そして4羽目が現れた。どうやら、先に巣立ったはずの2羽が戻って来ていたらしい。

 1羽目はベランダの床に着地、2羽目はすぐに外へ飛び立った。3羽目と4羽目は親鳥と少し佇んでいたが、親鳥が飛び立つとすぐに追って行った。
 独り取り残された1羽目は、しばらくクリツクリッと鳴いて親鳥たちが飛び去って行った方角を眺めていたが、程なく飛び立った。

 小鳥の一家が去ったベランダは、何だか火星の丘陵みたいに何もかもが静止していて、物音ひとつしなかった。
 僕はとても久し振りにベランダで洗濯をしながら、「行っちゃったなあ」と独りごちた。

 椅子を持って来て、空っぽになった巣を触ったり、中を覗いてみたりした。
 巣は、最初に触ってみたときよりも、固くしっかりしていた。そう言えば、カップルがここに戻って来た時に補修していたっけな―そんなことを思い出した。
 奥行17センチ、幅14センチのそれは、子育て用にひと月半程度使用するための簡易工作物などではなく、恒久的な建造物として利用できるほど丁寧に作られていた。

 
 などと感傷に浸っていると、外から「クリックリッ」という声が聞こえてきた。
 慌てて部屋に入りスクリーン・ドア(網戸)を閉じると、すぐに3羽がベランダに戻って来た。遠くから、「ピーピー」という親鳥を探すヒナの声が聞こえる。親鳥が飛び立つと、今度はベランダに残されたヒナが騒ぎ始める。
 あちらで「ピーピー」と叫び、こちらで「クピー」と答える。すると、別の方向から別のヒナが「キュッキュッ」と叫び、それらの声に反応するように裏手の森林で様々な野鳥の合唱が始まり、アパートの周辺は騒然となった。

 そして午後5時半、ヒナ鳥たちが1羽、また1羽と帰って来て、当たり前のように巣に入っていった。少し遅れて親鳥が戻ると、昨日までと同様、ヒナたちは「ごはん、ごはん」とコーラスを始めた。

 「やれやれ、あと数日はこんな調子かな」と僕はポツリと呟いた。
 「クピッ」(同感)・・・と親鳥。

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野鳥物語~孵化から24日目

16.孵化から24日目(12月2日午前9時45分)

 朝、はじめてヒナの姿を見た。

 親鳥が給餌の後も巣の前に佇み、時々出たり入ったりしていた理由が判った。巣の前に立っている自分の後姿を見せて、ヒナたちに巣から出て来るよう促していたのだ。

 ヒナはもう親鳥と見分けがつかないくらいに大きく育っていた。立派に生えそろった羽をバタつかせながら、巣の前をちょこちょこと歩いている。

 ヒナが出てきたのを見て、親鳥の動きが変わった。
 巣の下に掛けてある物干しに止まって、しきりに身体を左右に回転させる。まるで、「ほら、こっち!」とヒナを誘っているようにも見える。同時に、その姿は歓喜に満ち、また誇らしげでもあった。

 2時間後、親鳥が再び戻って来て同じ動作を繰り返した。と、今度はヒナが巣からピョンと飛び降りた。パタパタとぎこちない羽ばたきだったが、洗濯物や物干し台の横棒をうまく避けてベランダの床に着地した。
 親鳥が心配そうに周囲を飛び回る。でも大丈夫、ヒナはベランダの手すりまで軽々と飛び上がった。
 もう1羽のヒナが巣から出てきた。こちらは、ぐるりとベランダのなかを一周した後、いったん手すりに止まり、すぐに外へ飛び出して行った。
 その後を追い、親鳥と最初のヒナも飛び出した。

 10分後、親鳥が戻って来た。まだ巣の中にヒナが2羽ほど残っているらしい。
 親鳥は、巣の下の物干しにとまってクリックリッと鳴き、残りのヒナたちに巣立ちを促す。でも、こちらはチュルルと鳴き返すばかりで、いっこうに出て来る気配がない。
 その間、下からは先に巣立った2羽のヒナたちがクピーックピーッと大きな声で親鳥を呼ぶ。
 親鳥はそちらの方も気になるらしい。下のヒナたちを世話し、また戻って来るという忙しい時間がしばし続いた。

 4時間後、ヒナがもう1羽巣から出てきた。ただ、こちらはまだうまく飛べないらしく、いったんベランダの床に軟着陸し、再び飛び上がると巣の中に戻って行った。

 今日の給餌の最終便は、午後6時。
 明日は、小鳥たちの家族とお別れだろうか。

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