言葉と鉛筆で描く日常風景 201509

ある若き機関員の航海日誌(船橋勤務編3)

 日没後、船橋は闇に溶け込み、計器類やコンパスのオレンジ色の光が乗員の顔を淡く照らし出す。空に浮かんだ銀色の月光が、水平線から船に向かってひと筋の道をつくる。それは例えようもなく幻想的で、もし許されるなら木製の小舟にのって櫂を操りながら、いつまでもいつまでも銀色の道を月へ向かって漕いで行きたいと思った。

 洋上の星空はほんとうに宝石を散りばめたような美しさだ。陸上で見る儚げな星と異なり、一つひとつの星が線香花火の火玉みたいに大きく、またうるうると瞬いている。星の色も青や赤、黄色と様々だ。数も陸上とは桁違いで、大きいもの、小さいものと見比べているとそれは普段感じている平面な夜空ではなくて無限の奥行をもった宇宙なのだということが実感できる。
 流れ星も珍しくはない。ひとつ見つけると、次から次へと降って来る。学生の頃、「流れ星が消える前に願い事を終えれば、それが叶う」と本で読み、しばしば夜空を眺めたものだ。が、こんなに降っていてはさすがに有難味が薄れる。

 一度だけ日出の時間に東へ船首を向けたことがあった。その時の光景は今も脳裏に残っている。


 古来より人は月の光を銀のナイフに例えた。静かで鋭利で冷たい、そういう印象だ。他方、陽の光は炎の剣だ。それは熱く力強く、そして神々しい。


 日出時間になると、うっすらと明るんだ水平線上にきらりと光る剣が伸びる。同時に青色の水平線が金色に染まり始める。剣は次第に燃える弧に変化し始め、眼前の光景が黄金色に輝く。空も海も夕暮れのオレンジではなく金色にきらめく。


 僕はそれまで、なぜ人が金色という色彩を崇拝するのか不思議に思っていた。でも、この時それを感覚で理解した。それは、富ではなく文字通りHeaven(神の国)を象徴した。


 船は船首を太陽に向けて真っ直ぐに航走する。舵を握る僕はあまりの神々しさに圧倒されながらも、帽子を目深にかぶり目を逸らさない。僕たちの船には一点の曇りもない。光のなかに入って行けると思った。

素足のうさぎ~素敵な物語をありがとう。

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あの年の冬は、まったく異なる方角に飛んでいた星同士が交差した一瞬だった。

大好きなママに手を引かれ嬉しそうに帰っていくうさぎの姿を僕はいつまでも見送った。

さようなら、素敵な物語をありがとう。
さようなら、素足のうさぎ。



司馬遼太郎の言葉~「ロシアの脅威」から

「明治のその時期までの、いわゆる偉い人たちは、結局のところ正直なところがあるなということでした。
日本はこれだけしか米粒がないんだ、お金はこれだけしかないんだということを、わりあい正直に言っていました。」 (講演ロシアの脅威/
司馬遼太郎)

 合理主義というのは、リアリズムから生まれる。そしてリアルに物を見るということは、正直に見るということでもある。

 司馬氏が上で言う「その時期まで」とは日露戦争のことである。地を覆うほどの大国ロシアに勝利するにはどうしたらいいか、そういうことを真剣にそして正直に考えた結果、緒戦で勝利した後アメリカに仲裁を頼み痛み分けにもっていくというプランを描いた。
 しかし、その後「勝った、勝った」ということだけが強調され、様々な神話が生まれ始めた。つまり、人々は正直にリアルに物事を見るのを忘れ、物語のなかで思考を旋回させ始めたわけだ。

 僕は物語が好きだが、自身で何かを観察する場合、リアリズムから離れぬよう注意している。何故なら、そのスタンスを忘れると創造が妄想に変わってしまうからだ。

素足のうさぎ~最終話


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17.素足のうさぎ

月を駆けてく
夜を駆けてく
君が駆けてく

夢のなかなら どんな魔法も思い通り
だから君は夜を遊ぶ
夜は黒くない
夜は闇じゃない
それを知っているのはきっと君だけだね

星がはねる
夢がはねる
君と踊りたくて、みんなじっとしていられない


17. A bare foot rabbit

Run on the moon.
Run on the night.
You’ve been running.

In the dream, any magic is as you please.
Therefore you play at night.
Night isn’t black.
Night isn’t dark.
It’s only you who know it surely.

The star leaps.
The
dream leaps.
Everyone
can’t be quiet since they want
to dance with you.





ある若き機関員の航海日誌(船橋勤務編2)

 船は宝石を思わせる深い群青色の外洋を滑るように航走する。この群青色は、陸ではけっして見ることが出来ない。想像だが、大航海時代に船に乗り込んだ画家たちはこの色を表現するのに苦労したのではないだろうか。

 時折、イルカの群れが現れ、船から数百メートルほど離れたところを併走する。遊び好きの彼らは、交互に海面から飛び跳ね、愛嬌を振りまく。
 しかし、時速15ノットで航走する船に長くはついていけず次第に遠ざかっていく。

 群れを外れた渡り鳥が羽を休めに後甲板に降り立つこともあった。
 長距離飛行のため極度に疲労した様子で、甲板に降り立つ時も前のめりになって転ぶ寸前だった。乗員たちが腹ばいになってそっと近づき、水や食べ物を供給する。
 鳥が海を渡るのは習性だからと当たり前に考えがちだが、実際それは命がけの行動で、ひと度大洋へ出ると目的地に辿り着くまで羽を休めることも食料や水を補給することもできない。どうしてこんな辛い思いをしてまで海を渡るのだろう、とよく思たものだ。

素足のうさぎ~心

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16.心

目を細めて何を見ているの?
あまりに聡明で敏感な心。

他の人には判らない何かを感じることができるから、
それはとても素敵なことだけれど、
いつか色んなことが見えるようになったら
勇気をお出し。

けっして泣いたりしないで。

16.
A mind

What
are you looking at?


Her
mind is too sensitive and clever.

It
is wonderful because you can sense something the other people can't
see.
However,
gather up the courage when you come to be able to see various things.


Don't
cry.

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