言葉と鉛筆で描く日常風景 東南アジア素描~豊かさと価値観3

東南アジア素描~豊かさと価値観3


 タイランドは東南アジアの中央に位置し、広大な平原に大きな川が流れていることから、中世より交易で栄えてきた。だから貴金属はもとより宝石・お香・香辛料・絹織物といったものが豊富にある。
 
 例えば、この国の寺院は金銀はもとより、とりどりの顔料やガラス玉で豪華に彩られている。それに比べると日本のそれは驚くほど質素だ。
 
 日本は冬のある島国、つまり年の4分の1は作物が採れず、また海に隔てられた極東の僻地ゆえ、大陸の富や文化とほとんど無縁だった。だがそれが「侘び・寂び」というような独自の文化を生み出したとも言える。

 日本人は限定された物や環境の中から些細な幸せ、心の充足を見出すことが得意だ。
 上の例で言えば、日本の寺院は一見質素だが、その複雑な木組みは他に類を見ない。もとは、釘の入手が困難だったから始まったのだろうが、時を経て釘を使用するよりはるかに強い構造を生み出すようになった。

 教養の面でも日本人は他のアジア民族とは在り方が異なるように思う、例えば、僕の友人たちは暗喩をほとんど理解しない。だから文学的な論理構成を用いて会話をするのが難しく、時にそれが相手を怒らせたりもする。豊かな環境にあると、文学や俳諧に見られるような観念的思考が苦手になるのかな、とも思う。

 僕の祖父母は、戦時中、大陸で子育てをした。だから、物を信じない。「お前の心だけは誰にも奪うことができないんだ」とよく僕に教えてくれたものだ。
 小さなことから幸せを見つけ出せたら、辛いことがあっても乗り越えていける、と言いたかったのだろう。

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